お役立ち!コラム

2016.04.20

役員給与(役員報酬)の定時改定と注意点

前回のコラムでは個人事業主の家族従業員の給与について掲載しました。今回は『法人の役員に対する給与』の税務上の取り扱いや、改定時の注意点について、取り上げます。

従業員に支払う給与や賞与であれば、業績の善し悪しによって支給額を増減させても全額を損金にすることができますが、オーナー企業である中小企業の役員給与(役員報酬)の額を改定できるのは、基本的に年1回、事業年度開始から3か月以内です。

税務上、損金にできる役員給与(定期同額給与)の条件

 一般的に中小企業の役員給与については、税法上の定期同額給与であれば、全額を損金にすることができます。定期同額給与とは、次の要件を満たすものをいいます。

 ● 支給時期が1か月以下の一定期間である。

 ● その支給時期における支給額が事業年度を通じて原則同額である。

役員報酬(定期同額給与)の定時改定の要件

定時株主総会など毎年所定の時期に行う改定(定時改定)で、

 1)期首から原則3か月以内(3月決算法人の場合6月末まで)に行う改定であること
 2)事業年度内において、改定前の毎月の支給額が同額であり、かつ、改定後の毎月の支給額が同額であること

といった要件を満たせば、改定前と改定後の支給額はいずれも定期同額給与として全額損金算入できます。(税務署への届け出は不要です。)

■ 改定した報酬額はいつから支給可能か?

Q.3月決算企業で、定時株主総会を525日に開催し、役員の定期給与を月額50万円から60万円に増額する定時改定を決議しました。役員報酬の支給日を毎月末日としていますが、いつからその増額した報酬で支給したらよいですか?

A.期首から改定までの毎月の支給額が同額であり、かつ、改定から期末までの毎月の支給額が同額であるという定時改定の要件を満たしていれば、総会直後の531日支給分あるいは630日支給分から増額しても、改定前の支給分及び改定後の支給分ともに定期同額給与として扱われ、その事業年度にその役員に支給した定期給与の全額が損金として認められます。

■ 事業年度の途中で改定することは可能か?

業績が良い、資金繰りが苦しいなどを理由に、事業年度の途中に支給額を改定してしまうと、たとえ減額であっても、一部が損金として認められません。

例外として、例えば、役員の職制上の地位の変更、職務内容の重大な変更があった場合や、経営状況が著しく悪化した場合などの理由で改定が認められる場合があります。

ただし、一時的な資金繰りの悪化や単に業績目標に届かなかったという理由は「著しい悪化」には該当しないため注意が必要です。

家族役員・社員の給与の注意点

社長の家族や親族を役員や社員として給与(役員報酬)を支給している場合、勤務実態と支給額が見合っているかどうか、注意が必要です。この点は、近年、税務調査において厳しくチェックされています。

■ 勤務実態を明確にする

例えば、毎日出社していない、短時間の勤務、遠方に住んでいる、学生である、など勤務実態に照らして支給額が「不相当に高額である」とみなされると、「不相当に高額」な部分が損金として認められません。

■ 支給額を確定させる

株主総会・取締役会で各人ごとの役員給与月額を決定した場合、その議事内容の議事録を作成します。税務調査における確認事項となります。

役員給与の改定にあたっての注意点

近年の法人税率の引き下げにより、社長の個人所得に対する所得税のほうが高くなる例もあります。役員給与の額を決める際には、以下の点に注意して決めましょう。

 ● 会社が負担する法人税額
 ● 役員個人が負担する所得税額
 ● 会社と役員個人の双方が負担する社会保険料
 ● 利益に見合った妥当な金額

■ 税引後利益から試算する

 役員給与を決める際には、必ず税引後利益から試算します。税引前利益で計算してしまうと、法人税等の納税額によって会社に残る金額が変わってきます。また、設備投資などで金融機関からの融資を検討している場合には、まず必要な税引後利益を確保したうえで、役員給与の額を決めます。

■ キャッシュ・フローに注意する

 損益計算書上の利益には借入金の元本返済部分は含まれていないため、借入返済の予定がある場合には、返済に必要なキャッシュを確保したうえで利益予算を立て、役員給与の額を検討しましょう。