お役立ち!コラム

2015.10.20

役員退職金の支給について

最近では、顧問先の社長のご年齢も高齢化してきており、相続・事業承継の相談が多くなっています。社長の平均年齢の推移を見てみると、2014年では全国平均全体で59.0となっています。(出所;帝国データバンク:2015年全国社長分析)

ちなみに熊本県の社長の平均年齢は58.9歳(47都道府県中、31位)です。平均値としては、60歳より若くなっていますが、私たち監査担当者の感覚としては、70歳前の社長か40歳前後の社長かに分かれ、事業承継前の社長か事業承継が終わった社長かに分かれている気がします。

事業承継前の社長からよく相談される項目の一つとして「退職金をいくらもらえるの?」というご相談があります。昔は業績が良く、退職金の準備として生命保険を活用した節税対策をしながら貯めてきた保険積立金。「当然、退職金をもらうために節約をしながらコツコツと貯めてきた生命保険だから、その分は全額もらえるでしょ。」とおっしゃられます。お気持ちはよくわかります。

 しかし、その解約返戻金全額を退職金として全額損金計上が認められるかどうかは、税務上の判断が必要となります。法人が使用人に対して退職給与を支給する場合は、その全額を損金算入することができますが、「役員」及び「特殊関係使用人」に対する退職金については、「不相当に高額でないか?」を判断する必要があります。

退職金の支給額が相当かどうか?の判断は、「その役員の業務従事期間」、「退職の事情」、「同業・類似規模の他法人における役員退職給与の支給状況」等に照らして行うことになります。【図表1参照】

【図表1】不相当に高額かどうかの判断基準
項目 詳細
業務従事期間
業務に従事した期間が短いにもかかわらず、多額の役員退職給与が支給されている場合などは、「不相当に高額」と判断される可能性があります。
退職の事情 退職の事情は自己都合、会社都合、引責、死亡など色々ありますが、業績不振や不祥事等の責任を取って退職するにも関わらず、高額の役員退職給与が支給されている場合などは、「不相当に高額」と判断される可能性があります。
同業・類似規模の他法人における役員退職給与の支給状況 同種の事業を営み、規模も類似している他法人における、標準的な役員退職給与の支給状況と比較して明らかに高額な退職給与が支給されている場合などは、「不相当に高額」と判断される可能性があります。

役員退職金の適正額を算定する際に、実務上一般的になっている「功績倍率法」「1年当たり平均額法」をとりあげます。

A;功績倍率法

功績倍率法は次の算定式で求められます。

【功績倍率法の算定式】

 退職時の報酬月額 × 勤続年数 × 功績倍率(注)= 相当と認められる役員退職給与 

(注)功績倍率とは、報酬月額に勤続年数を乗じた金額の何倍程度の役員退職給与を同業・類似規模の他法人が支給しているのかを表す数値です。

この算定式を用いて算定された金額の範囲内で役員退職金を支給する限りは「不相当に高額」とはなりませんが、いつくかの注意点があります。

1)退職時の報酬月額の適性性

退職時の報酬月額が、その役員の功績等を適正に反映した金額である必要があります。

業績の良いときは、多く役員報酬を支給していても、退職時期の2、3年前から急激な業績悪化により役員報酬を減額している場合、最終月額報酬が低くなってしまいます。それを回避しようと退職の直前に不自然に増額されている場合は、「不相当に高額」と判断される可能性が出てきます。

2)功績倍率の適切性

功績倍率の設定が適切に行われている必要があります。そのためには、同等・類似規模の法人が偏ることなく適切に抽出されている必要があります。

B;1年当たり平均額法

【1年当たり平均額法の算定式】

  類似法人の役員退職給与の1年当たり平均額 × 退職する役員の勤続年数  

  = 相当と認めれる役員退職給与 

実務上、過大役員退職給与の判断方法としては、上記Aの功績倍率法が最も多く採用されていると考えられますが、功績倍率法による算定結果が不適切な金額になるケースもあります。たとえば、何らかの理由により役員が本来より低額または無報酬で業務を行っていた場合など、役員の退職時の報酬月額が本来の適正額ではないケースです。

そのようなケースでは、「A;功績倍率法」で計算すると著しく少額の役員退職金の算定額となってしまいます。もちろん、その役員が本来受け取っているべきであった適正な報酬月額を用いて功績倍率法の計算を行うことも可能ですが、その報酬月額が適正であることの合理的な根拠を説明できるようにしておく必要があります。このような場合には「B;1年当たり平均額法」を採用しても良いでしょう。



 どちらの方法を採用するにしても、会社の業績や役員の従事度合、退職の事情等を総合勘案して合理的な算定根拠を示す必要があります。

これから退職時期と退職金の支給額をお考えの経営者の方は、上記の算定方法を考慮する必要がございますが、退職するまでの事業計画と退職金の財源の確保も考慮しましょう。