お役立ち!コラム

2015.08.05

相続の放棄

今年(平成27年)の1月から改正となった相続税ですが、その影響により当事務所へもご相談が増加しています。それだけ相続税に対する関心が高いことがうかがえます。税金対策のご相談が多いのですが、相続の放棄についてのご相談をうけることもあります。 

相続が開始した場合、相続人は次の3つのうちのいずれかを選択できます。 

1.相続人が被相続人(亡くなった方)の土地の所有権等の権利や借金等の義務をすべて受け継ぐ単純承認

2.相続人が被相続人の権利や義務を一切受け継がない相続放棄

3.被相続人の債務がどの程度あるか不明であり、財産が残る可能性もある場合等に、相続人が相続によって得た財産の限度で被相続人の債務の負担を受け継ぐ限定承認

 今回は、『相続の放棄』についてとりあげます。

相続の放棄とは?

相続放棄とは、法定相続人となった場合に、被相続人の残した財産及び債務のすべてを放棄することで、その法定相続人は初めから相続人で無かったことになります。

この制度の趣旨は、被相続人が莫大な借金を残して亡くなった場合に、その法定相続人にその借金を負担させてしまえば、残された家族の生活が成り立たなくなることもありますので、この相続放棄という救済措置があるのです。

相続放棄を選択する場合

 1)負債(マイナスの財産)が明らかに多い場合

 2)相続争いなどに巻き込まれたくない場合

相続の承認または放棄をすべき期間

相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認または放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。(民法915条)

原則として3か月間という熟慮期間の定めがありますが、相続人が相続財産の状況を調査しても、なお、単純承認、限定承認又は相続放棄のいずれをするかを決定できない場合には、家庭裁判所は申立てにより、伸長することができます。

申立て手続きの詳細は、家庭裁判所のHPをご参照ください。また、3か月経過後の相続放棄についても、「相当の理由」があれば、放棄が認められる可能性がありますので、司法書士・弁護士にご相談ください。

生前の相続放棄はできない

よくご相談されることのひとつに「相続開始前に、相続放棄をしたい」がありますが、相続開始前の相続放棄は認められていません。

相続放棄する場合は、必ず、「自己に相続が開始したことを知った時から3か月以内」に家庭裁判所に申述しなければ、効力はありませんので、ご注意ください。

ただし遺留分については、相続開始前の放棄が可能です。

相続税法上の取り扱い

放棄をした相続人は、はじめから相続人とならなかったものとみなされます。ただし、相続放棄による租税回避防止の観点から、法定相続人は相続放棄によって変化しないとされ、相続税の基礎控除額を計算する際の法定相続人の数に含まれます。

【平成2711日以後の相続の場合】

相続税の基礎控除額 = 3,000万円 + 法定相続人の数 × 600万円

たとえば、長男が被相続人の場合に、両親が相続放棄をすることで、次男~五男までが法定相続人となるとすると、法定相続人の人数の増加分だけ非課税限度額が増加し、納付税額が減少することとなります。

このような租税回避行為を防止するために、相続税法上、相続放棄によって法定相続人の数は変化しないこととされています。



 今回は、相続放棄について見てきましたが、被相続人が家族の知らないところで多額の借金をしていたという案件も少なくありません。相続開始日から原則3か月を過ぎますと、相続放棄ができる可能性が少なくなってしまいますので、
債務の把握は早期に行いましょう。