お役立ち!コラム

2013.09.20

生前贈与

 「相続」というと、身近な人や自分自身の死を連想させてしまうため、考えたくない問題の一つかもしれません。しかし、残された人のことを思い、誰に何をどう残すのかを生前に考え、整理しておくことは重要ではないでしょうか。

 特に会社の経営者にとっては、財産を持っている場合が多く、相続税の対象になる課税遺産は大きくなりがちです。過去に築いた財産があるものの、それを売って税金を払ったら事業の存続が難しくなったり、多額の税負担で資金がショートしたり、といった問題も考えられます。

 そこで、生前贈与計画的に行っていくことも対策のひとつです。 贈与の際の課税方法の種類や、免税・節税につながる制度等について、前提条件も含め整理したいと思います。

1.贈与税の計算と税率

 贈与税の計算には(後述しますが、暦年課税の場合)基礎控除額110万円がありますので、年間110万円以下の贈与にかかる税額は0円となっています。
(注:対象となる贈与者と受贈者間で過去に相続時精算課税の届出をしている場合は、この基礎控除は使えません)

 基礎控除額を超える部分についての税率、速算表は次のとおりです。

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
   200万円 以下 10%
   300万円 以下 15%   10万円
   400万円 以下 20%   25万円
   600万円 以下 30%   65万円
1,000万円 以下 40% 125万円
1,000万円 超  50% 225万円

※平成27年1月1日以後の贈与から税率構造が変わります

贈与税額の速算式:{( 贈与財産合計額 - 基礎控除額 )× 税率 }- 控除額 = 贈与税額

2.「暦年課税」と「相続時精算課税」

 贈与税の課税方法には2種類あります。ひとつは先の「暦年課税」、もうひとつは「相続時精算課税」です。
これらの
違いを整理してみましょう。

課税方法 暦年課税 相続時精算課税
前提条件 なし 65歳以上の直系尊属から満20歳以上への贈与
基礎控除 毎年110万円 届出初年度のみ110万円
特別控除 なし 2,500万円
適用期間 1/1~12/31の1年間 届出後、贈与者毎に生涯に渡り
計算期間 同上 届出後、相続開始まで
税額 (もらった価額-110万× 超過累進課税率 (もらった価額-2,500万)× 20%
納付時期 110万円未満は申告不要(注)
超えた場合は2/1~3/15間に申告し、納付
2,500万円を超えた分の贈与の贈与税は同左
メリット 相続財産を110万円ずつ、生前に減らすことができる。 大型贈与がしやすい。相続時の評価は贈与時の評価で行うため、価額が上昇しやすいもので行うと節税効果が髙い。
デメリット 大型贈与の際は、税額負担が大きい。 同じ贈与者からの暦年贈与が受けられない。

※相続時精算課税制度は、平成27年1月1日以後の贈与から適用要件が緩和されます

注)110万円未満の場合でも、税務署へ申告しておくことも有効な方法です(…通年贈与とみなされないために

 暦年贈与の注意点を見てみましょう。

・贈与者の相続開始(死亡の時)前3年以内の贈与財産は、相続税の課税対象になります。
・受贈者が、贈与されたことを知らない場合は全て、贈与または相続財産となります。

 ところで、「毎年同時期に基礎控除内で同額の贈与をした場合、一連の贈与とみなされ、合計額にて贈与税を払わなければならない」という誤解はされていませんでしょうか?

 毎年贈与契約書を交わして贈与していれば、同時期の同額でも問題ありません。

 ただし、10年間で年間100万円ずつ贈与するという約束等を交わした場合は、贈与税がかかります。10年分の契約書を先に作るのも同様です。

 また、受贈者が認知していない受贈者名義の預金通帳に110万円未満の暦年贈与をしていたとしても、法的に有効な贈与ではない(受贈者が知らない)ため、相続財産とみなされます。

3.制度・特例等

 贈与にはいろいろな制度や特例等がありますので、概要を紹介します。

【住宅取得等資金に係る相続時精算課税の特例】
 …20歳以上の者が住宅取得等資金を親からの贈与により取得した場合には、その親が65歳未満であっても相続時精算課税の適用を選択することができる。

【直系尊属からの住宅取得資金の贈与に係る贈与税の非課税】
 …受贈者が住宅を建てる為に贈与を受けた場合、700万円までは非課税。(平成25年中に限る。平成26年中は500万へ引き下げ。)

【贈与税の配偶者控除】
 …婚姻20年以上の夫婦間における贈与で、居住用の不動産または、居住用不動産の取得に充てた金銭が含まれているときは、基礎控除の他に2,000万円が控除される。

【農地等を生前一括贈与した場合の贈与税の納税猶予】
 …農業を営む贈与者が、その所有する農地等を、18歳以上の農業後継者へ一括贈与した場合には、その受贈者は担保を提供して必要書類を提出することにより贈与税の納税猶予を受けることができる。(適用要件等には注意が必要)

【非上場株式等についての贈与税の納税猶予の特例】
 …事業を承継するという前提で、非上場株式の贈与について納税が猶予される。(適用要件等には注意が必要)

【直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税】
 …30歳未満の受贈者が直系尊属(祖父母)から教育資金に充てるための贈与を受ける際、金融機関との一定の契約に基づき開設した教育資金口座を使って行えば、1,500万円までが非課税となる。(平成2541日~平成271231日)


 「非上場株式等についての贈与税の納税猶予の特例」は平成25年度税制改正にて適用要件が緩和され、利用しやすくなっています。条件等
(詳細は中小企業庁HP参照)がありますが、納税が猶予されれば事業承継をスムーズに行うことができます。下記に計算例を記します。


・この特例の適用を受けた場合、継続届出手続を贈与税又は相続税の申告期限後5年間は毎年、5年経過後は3年ごとに提出する必要があります。

3代目へと承継する場合は再度、同特例の適用を受けることによって、納税が猶予されます。事業を続ける限り、半永久的に猶予を受けられるようになっています。(会社倒産時等の場合、一定の要件を満たしていれば、猶予されていた税金は免除されます)

―最後に―

 『・・・相続はいつ起こるかわかりません。』

 生前贈与は専門家に相談し、早めに行っていくことが大切です。



《参考リンク》


中小企業庁 税務サポート「事業承継」
http://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/index.html

国税庁 非上場株式等についての贈与税の納税猶予の特例
https://www.nta.go.jp/taxanswer/zoyo/4439.htm